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−それでは、『世界でいちばん乗りたいクルマ』を書いたキッカケを教えてください。
『クラッシュ』『リバース』と2冊書いて、今後何を仕事としてやっていこうかと思ったときに、書くことが大きな仕事になるということを感じることができた。それと同時に、あの2冊を書き上げることで全治3年と言われた「過去」を清算することができた。
「過去はもう清算できた。よし、次は未来だ」って思ったときに、周りを見まわすとものすごく世の中が変わっていることに気づいた。例えば、六本木ヒルズができている。小田急線は高架になって開かずの踏切がなくなっている。それで月日の長さをすごく感じたんだよね。この本を書きはじめたのは2003年だから、事故から5年。5年も経つと世の中がすごく変わっていて、自分が遅れをとって、まるで浦島太郎になってしまっていたんだよね。
街を歩いていてすごく目につくのは走っているクルマがまったく様変わりしていたこと。事故の前は、ほとんどのクルマに乗ったことがあったし、もちろん名前も性能も全部わかっていたけど、5年も経つと走っているクルマがまったく違っていて、知らない格好の知らない名前のクルマがいっぱい走っている。それだけじゃなく5年前は、セダンが主流だったのに、コンパクトカーとかミニバンだらけになっていた。
クルマって毎日身近に見るものだけに、すごく置いていかれちゃった感じがしたんだよね。この世の中の流れの速さはなんだろうって。自分が未来をめざす前に、まずは自分が浦島太郎状態から脱却して、世の中の「いま」の流れに追いつかないといけない。じゃあ追いつくには何をすべきか。これはもう、走っているクルマに乗ってみれば見えてくるんじゃないかなって思ったんだ。
というのは、クルマって鉄とプラスチックとゴムでできているわけだけど、そのなかにすごく人の価値観とかライフワークとかが反映されていると思うんだ。自動車メーカーは漠然とクルマを造っているんじゃなくて、例えば幼稚園の送り迎えをする若い奥さん向けにこういうものを造ろう、とか具体的にターゲットとなるユーザーにきちんと合わせたクルマを造っているんだよね。
だからクルマを通して、世の中の流れが見えてくるだろうっていう考えがあった。よし、じゃあクルマに乗ってみよう。1台2台じゃわからないから、とりあえず100台乗ってみよう。どうせ100台乗るなら、本も書いてみよう。いったい、どんなクルマなんだろう。自分自身、好奇心が沸いてきたし、それなら本もおもしろくなるだろうって。
−本を書くため、というよりクルマに対する自分の興味が先だったんですね。
うん。本を出すために試乗するっていう順番が自動車評論家の普通の手順かもしれない。でも、俺の場合はそうじゃなかったからね、まったく。俺、仕事はじめるときいつもそうなんだけど、自分の興味からスタートするんだよ。……そもそも俺、趣味がないんだよね〜。
―えっ、そうなんですか?!
(以下、インタビューは次回に続く)
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