SPIRIT Information BBS

【講演レポート】「太田哲也の出張授業<夢を実現するために〜チャレンジ>」
2011年小学校第二回が行われました。

○日時:12月5日(月)
○場所:福島県いわき市立好間第二小学校○主催:朝日小学生新聞
○共催:出光興産株式会社
○参加者:小学4〜6年 120人

福島県いわき市内にある好間第二中学校は、明治6年から続く伝統ある小学校で、校長室には歴代の校長先生の写真がずらりと部屋を囲むように飾られていました。今年は3月の震災や原発の影響もあり、入学式ができなかったり、地盤沈下で校庭での運動会ができなかったりしたそうで、今回の出張授業も音楽室での開催となりました。出迎えてくれた高橋校長は、「子どもたちには当たり前に接することを心がけています。
いろいろなことがありますが、学校にくれば友達と遊んだり勉強をしたり、悪いことをすれば叱られる。そういう当たり前の日常を作ってあげることが大事だと思っています」とおっしゃっていました。

 今回の出張授業を大変楽しみにされていたという高橋先生から太田さんへのリクエストは、以下のものでした。
「命にかかわる大変辛い思いをされた太田さんが、なぜまたサーキットへ戻ったのか? そういう体験談から、生きる意味や勇気を子どもたちなりに感じ取ってほしい」

 いよいよ講演がスタートです。太田さんの紹介ビデオを観たあと、校長先生が生徒たちに話しかけます。「ビデオを観て、おぉーっと思ったでしょう。お名前を覚えてますか?」
生徒たち「太田哲也さん!」
校長先生「今日は、太田哲也から、夢をもつこと、そしてあきらめない大切さを学んでほしい」

 今回は音楽室での開催ということで、太田さんと子どもたちの距離もいつも以上に近く、子どもたちの表情も真剣に聞いているのが伝わってきます。恒例の質問コーナーでは、最初から10人以上の生徒たちの手があがるなど、たくさんの質問が続き、太田さんも「最後まで答えてあげたい」と子どもたちとのやりとりが、しばらく続きました。


〜以下、質問コーナーより〜

生徒:太田さんにとって夢とはなんですか?
太田:夢は僕にとって希望ですよね。夢があるから人生が楽しくなる。その夢は絶対あきらめちゃいけない。でも夢は変化するということ。たとえば、君の夢は何かある?
生徒:お医者さんになりたい。
太田:そうなんだ。お医者さんになりたいという夢に向かって頑張ってほしい。でもあるときもしかしたらお医者さんより看護婦さんのほうが向いているかもしれないと思うかもしれない。そこで方向を変えていくのも夢の実現。夢に向かっていくと途中でどんぴしゃはないけど自分では気づかなかった別の夢が現れてそれの方が自分に向いていてもっと楽しいということもあるからそういう方に向かってほしい。それが僕の夢のあり方でもあります。

生徒:さっき話していたように自分でチャレンジしていくといっていたけど今回またチャレンジしたいことはありますか?
太田:今もいろんなことにチャレンジしようと思っています。さっきは言わなかったけどまたレースをやろうと思っています。プロの時のような大きな車ではないけど、今もレースにもチャレンジしているし、自分だけではなくいろんな人にレースをやらせようと教えてもいるし、かっこいい車を作る、チューニングというんだけど、それもやっているし。ラジオの番組をやったり、連載のコラムを書いたり、いろんなことをやっていますね。思いついたことはすぐにどんどんやってみる。そうすると最初は気付かなかった自分の可能性に気付ける。だからいろんなことにチャレンジしています。

生徒:太田さんはなぜレーサーになろうとしたんですか?
太田:よく聞かれるんですが、子どもの頃からなろうと思っていたわけではないんです。レーサーになるにはだいたい一つのパターンがあって、子どものころからゴーカートのようなもの、レーシングカートというのがあって、それに乗ることが近道です。でもそれには条件があって、お父さんがお金持ちであること、お父さんがとても子どもにレースをやらせたがっていることが必要で、僕にはこの条件はありませんでした。大学に行ってどういう仕事をしようと思ったとき、大学時代はいろんなアルバイトをしたんです。で、どれもあわないなと思ったとき、レーサーっていう仕事がもしかしたら自分に向いているんじゃないかなと。さっき言ったけど性格がレーサーに向いていて、ちょっと走らせたらうまく走れて。自分に向いているなと思ってレースの道に入った。そうしたらやっぱり向いていたんだと思います。いっぱい競争相手がいたんだけどうまくいって3〜4年したらプロになっていたんです。

生徒:太田さんにとって尊敬できる人は誰ですか?
太田:フェラーリっていう車を知っている?それを作った人がエンツォ・フェラーリっていうんだけど、その人かな。フェラーリって世界でみんなが憧れているんだよね。なんで憧れているのかというと、歴史があるわけではなくて、日本のメーカーより歴史は短いくらい。ではなんであんなにブランド力があって多くの人に夢を与えられるのかと言ったら、ほかのメーカーはクルマを売りたくてレースをやる。レースをやるとブランドが上がるから。でもフェラーリはそうじゃなくて、もともとレースをやる会社でレースをやるために車を作る。まったくほかの会社と違う方法なんです。でもそのくらいレースがやりたくてやりたくて、そのレースをやりたい気持ちがみんなに共感を呼んで世界中の人に夢を与えるようになってきた。という意味では特別な自動車メーカーだなと。それを作ったエンツォ・フェラーリは尊敬しています。自分もそうなりたいな、日本でもこんなクルマメーカーが作れないかなと思っています。

生徒:けがをしてつらかったと思うんですけどその支えとなったものは何ですか?
太田:やっぱり痛いんだよね、体も心も。なんでこんな痛い目に合わなきゃいけないのかなと思ってしまうけど、やっぱりそこで子どもたちの笑顔とか、妻が言った「私たちのために生きて」と言われたことなど、自分の痛みには理由があるんだと思えたことが大きいと思いますね。そして僕の家族だけでなく、僕を何とか生かして、そしてまた活き活きとさせたいというまわりの人たちの思いが、そしてたくさん手紙をくれたファンの人たちとか。実は事故から一年くらいは、頑張ってくださいと言われるのも重荷だったんだけど、その後、自分が動き出してからは「がんばれ」の声がすごいプラスになって支えになりました。

生徒:レーシングドライバーになってよかったことは?
太田:女の子にもてること(子どもたち笑い)。冗談だけど、自分の能力が生かせて、自分の短所が長所になったこと。ほかの仕事を選んでいたらみんなに怒られてばっかりだったと思うけど、レーサーになってみんなに褒めたりよかったといわれたのが良かったかな。でもレースはみんなが思うほどいつも楽しいということではなくて、そりゃあ表彰台でシャンパンを抜いたりしたときはいいんだけど、次の日からもう大変で、タイムが出なかったり、クルマが壊れたり、嫌なことはいっぱいある。レースが楽しいか?というとその時はあまりそうじゃなくて、楽しいのは充実感だと思います。そういう意味では、みんなにも言いたいんだけど、レースが楽しいというより結果が出てまわりから褒められるのが楽しいことなんで、「仕事は辛い」と大人は言うかもしれないけど、どんな仕事も楽しいと思います。

生徒:レーシングカーを走らせるのは、恐くないですか?
太田:レーシングカーは、例えばル・マン24時間レースは一般道を走るんですが、普通のクルマが走って時速60q位の道を360qくらい出すんです。高速道路の制限速度が100qですからね。新人の頃は、はっきり言って怖くてたまんなかったんです。筑波サーキットは低速コースなのでうまく走れるんだけど、高速コースの富士スピードウェイではカーブで、もしここで俺が失敗したら死んじゃうなと思って怖かったんです。なので最初はうまくいきませんでした。でも、ある時、気付いたんです。例えば、平均台。地べたに平均台があれば恐くないけど、10mの高さにあったら怖いでしょ? でも、よく考えたら、幅は一緒だよね。だから、「落ちなきゃいいんだ」ってこと。レースも何100キロ出そうがミスしなければいいんだとわかった。ミスってふと気を抜いたときに起こるもので、絶対に集中を切らさなければいいんだと思ったんだ。どんどん集中していくと、ゲームセンターのドライビングゲームを後ろから見ているような気分になって、自分はヘルメットをかぶって操作しているんだけど、もう一人の自分が後ろから見ているような気になって、そうしたら運転がすごくうまくなったんだ。ところで、この前サッカーの中村俊輔選手が同じようなことを言っていたんだけど、自分がプレーしているとき自分の目で見ないで、天井の方から自分を見ると周りがよく見えるといっていたけど、もしかしたらちょっと似ているかなと。そういう感覚で運転しています。するとあまり恐くない。

生徒:またレースをプロの人たちとやりたいと思いますか?怖くないですか?
太田:またレースやってやるぞと思います。今、僕は52才なんだけどもしかしたら、またルマンに出てやるかくらいに思っています。運転することは、怖いなとは思いますよ。でも、レーシングカーに関してはミスしないでいればいいんだとわかってくる。雨が降れば、この雨やばいなとわかるんですよ、経験があるから。そこでやめれば事故に遭わない。でもプロならそこでやめられない、仕事だから。今はプロではないから、やめられるわけだからレースはそんなに怖くないです。あとちょっと関連するけど、「あんな事故に遭って車は怖くないですか?」とよく質問を受けるんだけど、やっぱり怖い気持ちはある。だから事故に遭わないようにすごく気を付ける。怖さはそんなに簡単に克服できないけど、クルマは僕の自由を広げてくれることもあってどっちを取るかとなると自由を取りたい。そういうことはみんなにもあるんじゃないかな。いやなこともあるけど楽しいこともあるからやってみようと、そういう考え方をしてもいいんじゃないかなと思います。

【生徒代表6年生女子からご挨拶】
「本日は大変お忙しいなか、おいでいただきありがとうございました。太田さんのお話はとても分かりやすく、引き付けられる内容でした。私が一番印象的だったのは、自分は生きている意味があるのか。自分は存在している意味があるのか。という言葉でした。それほど事故は苦しく悲しかったのだな、と感じました。それに、チャレンジという言葉は本当に大切でつらくても「チャレンジすれば何でも乗り越えられる」ということがしっかりと学ぶことができました。私は今日の太田さんのお話を聞いて、命はとても大切なものなのだと改めて感じました。また、今日のお話から学んだ夢にチャレンジすることを忘れずに今後の生活に生かしていきたいと思います。お体に気をつけて今後もがんばってください。そして、これからも全国のみなさんに大きな感動をあたえてほしいと強く願います。本日は本当にありがとうございました」

【講演を終えて〜校長先生談話】
「今日のお話は、子どもだけじゃなく保護者の皆さんにも伝えたいメッセージがたくさんありました。子どもたちの拙い質問に、茶化したりせず、きちんとすべて答えてくれたことが本当にありがたかったです。一段高いところから大人が話しても子どもには響かない。わかりやすく伝えてくれたから、子どもたちからあんなに質問が出たのだと思います。これから先、中学にいって壁にぶつかったり、将来、もしかしたら原発のことで何か言われたりする場面もあると思いますが、今日の太田先生の話を聞けたことで、つまずいた時に思い出して乗り越えてくれると思います。また、夢を叶えるお話を伺い大切なキャリア教育になりました」





朝日小学生新聞 掲載記事をみる





---------------------------------------------

講演に来てくださった皆さん、誠にありがとうございました。

もしよろしければ


・コミュニケーションの場所です。どなたでもお気軽にご参加ください。


BBSに感想、ご意見等のメッセージをお残しください。

よろしくお願いいたします。


KEEP ON RACING 事務局


 
LINK
BLOG
BBS
STAFF
問い合わせ


■■ 太田哲也オフィシャルサイト


〒224-0006 横浜市都筑区荏田東2-9-1
TEL : 045-948-5540 FAX : 045-948-5536

※このサイトにある全ての文章、画像等の無断転載を禁じます。




©ofiice keep on racing all rights reserved