新たに幹部社員となる方々を対象とした3日間に渡る研修期間の初日の夜、太田さんによる特別講演が行われました。テーマにもあるように企画立案の理由は、「想像を絶するような経験をされながら、不屈の精神力で挑戦し続けてこられた太田さんから挑戦する姿を示すことの意味、素晴らしさをお話していただきたい」というものでした。富士通さんでは、「人間力」を社員教育の一環として大事にされています。どうしても仕事そのものに気持ちが向かっていくなかで、「視野を広げる」ことが必要であり、「人間力」を養うことで、部下たちを牽引する力が備わってくるという考えをもっているのだそうです。
太田さんは講演のなかで、事故について「明治維新のような価値観がガラッと変わる出来事」だと話していました。事故から復活していくなかで、太田さんが気付いたのは「自分が幸せであると認識することの大切さ」「目の前のことをひとつひとつチャレンジしてクリアーしていくと予想外の景色が見えてくるということ」。それは、仕事をするうえでも共通することだと言います。
「いかに仕事にわくわく感を見つけるか、いいスパイラルを作っていくかは結局は自分の意識の持ち方次第なんですよね」
その後、質問コーナーへ。
Q.負けを知らず、自分の意見を言えば周囲がついてくるようなトップレーサーだった時代から一転し、周囲のご家族も苦労されたでしょうし、太田さん自身が周囲の方々に辛く当たってしまったこともあると想像されます。自分が置かれた環境が大きく変わり、周りとの関係はどうなってしまうのかなど、どのような葛藤がありましたか?
A.レーサーはわがままで妥協しないところがありますが、かといって相手に求めるからには自分自身も妥協しないでやるということはあります。時間がかかる療養は最も僕に向かないものだったかもしれません。でも、リハビリや医師、看護師さんたちがチームのクルーに思えてきて、もっとこうしたらよくなるんじゃないかと求めていたように思います。ですから、周囲にいた人たちは大変だっただろうし、妻は最も大変だったと思います。でも、自分がよくなりたいという気持ちをもっていれば、そして結果がそれについてくれば、最終的には一緒に頑張ってくれた周りの人たちも応援してくれるということはあるのじゃないでしょうか。
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