看護職はじめ専門職をめざす学生さんたちは、早くから社会との接点をもつせいか、職業意識の高さをいつも感じます。そのために早くから壁や悩みにぶつかることもあるようです。事前に先生方から聞いた話で印象深かったことは、「夢を描いて学校に入ってきたけれど、現実を知り悩んだり、自分には向いていないのではと迷っている学生たちもいます」ということでした。
今回の太田さんの講演は「プロフェッショナル」として接してくれた看護師さんのエピソードが語られていきました。じっと手を握って「辛いわよね」と言ってくれた婦長さん。日頃は優しい態度で接してくれた担当看護師さんが、自殺をはかった患者をみて言った「病院で死のうとするなんて甘いわよ」という言葉が自分に突き刺さったこと。人間として扱ってくれる実感がもてると心が救われたこと。振り返ってみて、当時辛い時期を接してくれたナース全員に感謝していること。
磐城共立高等看護学院には、篤子さんの中学時代の同級生が先生として勤務されていて、そういうご縁があって今回は篤子さんも講演会に立ち会いました。太田さんは、そのせいか講演前はいつもよりも緊張していたようです。でも、実際にはじまると「みなさん、かわいらしいですね」という太田さんの挨拶に、ドッと会場が沸き、そこからはいつものペースを掴んだようでした。
太田さんが真剣に話せばじっと耳と傾け、太田さんがユーモアを交えて話せば笑いが広がる。そんな反応がダイレクトに伝わる講演会でした。
余談ですが、質疑応答コーナーでは、篤子さんがいる前で「奥様との出会いは?」と聞かれ、照れていた太田さんでした。
最後に学院長のおっしゃっていた言葉をご紹介します。「きょうの話を聞き、磐城にいてよかったと思うことが増えました。毎年こうして講演会をしていますが、きょうは居眠りしている学生がひとりもいませんでした。先生の話はとてもわかりやすく、心というか魂に響くものでした。プロフェッショナル、という言葉は私も大好きです。太田先生のお話を聞いて、“プロ”の姿勢や信念は通じるものがある。イチロー選手もこういう方なんじゃないかと想像しました。きょうの話を心にとめて3年生は現場に出てほしいと思います」
取材・文/隠岐麻里奈
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