フォルクスワーゲンゴルフGTIカップ第3戦 (ツインリンクもてぎ)
伊藤真一選手がエキスパート2位、野澤選手がクラブマン初優勝!
2007
Volkswagen Golf GTI Cup Japan Series Rd.3
会場:ツインリンクもてぎ
天候:雨
コース状況:ウェット
ゴルフGTIカップ第3戦が7月21日(土)にツインリンクもてぎにて開催され、Team
KEEP ON RACINGから参戦した伊藤真一選手はエキスパート2位、そしてハマエンジニアリングTEZZOを駆る野澤建児選手(TEZZO
RACERS CLUB)はクラブマンクラス初優勝を飾りました。
今回、Team KEEP ON
RACINGが伊藤真一選手を起用したのには、理由がありました。伊藤選手は今年の3月に2輪のテスト走行中に転倒。左足の股関節と骨盤を痛め、「10人中9人の医者に引退しなさいと言われた」(伊藤選手)ほどのケガを負ったのです。その後、1ヵ月半の入院を経て、人工関節を入れることで選手復帰への可能性がみえ、「死ぬほどやった」というリハビリの末に復帰へと向かっていきます。ところが2週間前に、再び練習中のトラブルで転倒し、鎖骨にヒビが入った状態に。それでも、「自分に納得がいくまでレースを続けたい」と伊藤選手はチャレンジを諦めませんでした。
6月24日に太田と再会した伊藤選手は、今回のゴルフGTIカップ参戦を快諾しました。
「太田さんからの誘いでもありましたし、今の自分にとって貴重な時間をどう使うかを考えたときに、ぜひ参加したいと思いました」(伊藤選手)
太田は伊藤選手の起用について、こう語ります。
「キープオンレーシングの使命は「チャレンジし続ける」というメッセージを広く世の中に伝えること。伊藤くんの諦めない精神をより多くの人に伝えることがキープオンレーシングの役目であると感じたんだ。僕自身、自分のことも重ねあわせて共感もしたしね」(太田)
こうして昨年の第4戦(菅生)以来となるゴルフGTIカップへの伊藤選手のジョイントが決まりました。そして、このレースが伊藤選手のケガ後の復帰戦にもなったのです。
練習ではセッティングが煮詰まり、2台ともに好タイムをマーク。しかし、予選は雨。雨用セッティングに悩みます。そして迎えた予選、野澤選手が総合でポールポジション。伊藤選手は大雨とアタックのタイミングが重なってしまい5位に甘んじました。「リザルトは見たくない」という言葉に笑顔の裏にある闘争心が戻ってきたことを感じました。
そして、決勝。5位スタートの伊藤選手は、野澤選手、エキスパートの飯田章選手とコンスタンティン選手を次々と抜かし、2位に浮上。最終周にはファステストラップも記録し、貫禄のレースをみせてくれました。
「3月にケガをしたのがもてぎで、今日このサーキットで復帰ができたことはうれしく思います。闘う感覚が戻り、自分が燃えることができることが確認できてよかったです。キープオンレーシングの太田さん、関係者の皆さんありがとうございました」
伊藤選手のチャレンジは、その場に居合わせた人たちすべてに響くものがあったのではないでしょうか。
また、クラブマンクラス初優勝を果たした野澤選手。いつも冷静で落ち着いている野澤選手が、予選でポールポジションをとると見ているこちらがハッキリとわかるぐらい緊張した表情をみせ始めました。いつも同行されている奥様も「あんなに緊張している姿は、はじめてみました」と驚いていたほどです。
「とりあえずクラブマンで首位キープをめざします」と不安そうに話す野澤選手に、太田さんは強く言いました。「いや、せっかくいいポジションをキープしたのだから、そんなに消極的な気持ちじゃなく強気でいこう。総合結果を意識しなよ」。
「いつものように冷静に」というつもりで臨んだという決勝ですが、やはり緊張はあったのでしょう。フォーメーションラップからスタートを切るときにエアコンを切り忘れたこともあり、エキスパートクラスの洗礼を受けた野澤選手。しかし、その後は安定した走りで首位をキープ。途中、ゲストドライバーの飯田選手を追い上げ、いつもの積極性をみせてくれました。
「本当にチームの皆さんのおかげです。マシンセッティングもよかったです。伊藤さんについていこうと2日間必死だったので、といっても、ぜんぜんついていけませんでしたが(笑)、勉強になりました。初優勝、感無量です」
また、今回からTEZZO RACERS
CLUBとして初参加した泉孝一選手は、決勝前に太田監督から「前のクルマについていくように」とアドバイス。
「スピンもしちゃいましたが、前のクルマと何台かでバトルできて、それがすごい楽しかった。10秒もアップしました」と最高の笑顔をみせてくれました。
太田監督はレースを終えて、こう語りました。
「現状維持ではなく、上をめざすことが大事だってことだよね」
チーム力で結果を出せた第3戦だっただけに、メカニックはじめチームスタッフの喜びもひとしおでした。また、ゴルフGTIカップのエントラント同士がリスペクトしあう、なんとも言えない"いい"雰囲気も改めて感じられました。VGJ、COX、BS(敬称略)などをはじめとする関係者の皆様や、ここに至るまでお世話になった皆さんにも感謝したいと思います。
(取材・文/隠岐麻里奈)
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