2008-5-15
春にして君を離れ
(クリスティー文庫)
アガサ・クリスティー (著), 中村 妙子 (翻訳)
妻、篤子がVERY誌の取材を受けたときに、編集者に「感動した本は?」と聞かれて、この本がすごくよかったと言っていた。推理小説ではなく、アガサ・クリスティーが別名で出したシリーズらしい。そんなに篤子が感動したというのならば、どんなものかと思って興味をもった。
読み出してみたら、けっこうつまらない。話の筋は主婦が子どもに会いにインドに行って帰ってくるまでのストーリー。篤子がどういう気持ちで読んだのだろうか。どこを感動したのだろうか、という人の日記を読むような覗き見的ワクワク感だけで読みすすめた。ところが、山場は最後にきた。ストーリーとすれば周りの空気を読めない人がいて、それになんの文句も言わない優しい夫という筋なのであるが、自分がいかに周りの人が言うことを自分に都合よく解釈していたのかに気づく。そして周りの人にいやな思いをさせてしまったことを反省する。ところが、最後にどんでん返しがある。彼女が家に帰ると、また元にもどってしまうのだ。つまり夫の彼女に対する接し方が彼女をそうさせてしまっていたのだ。
僕は、もっと人生はファイトしないといけないと思う。本当にいい夫だと思っていたのに、本心では君はこういうふうに変えなければいけないと言ってあげないイヤなやつだと思った。でも読み方は人それぞれいろいろあると思う。その読み方については解説で、栗本薫が書いている。この人の”顔”という小説を以前に読んだときはつまらなかったのだが、この解説はとてもよかった。
★今日のラインマーカー
わたしがこれまで誰についても真相を知らずにすごしてきたのは、こうあってほしいと思うようなことを信じて、真実に直面する苦しみを避ける方が、ずっと楽だったからだ。
(太田哲也)
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